「アキシアルフラックスコアレスモータ(Axial Flux Coreless Motor)」の検討
今回はソーラーカーなどに採用されているAxial Flux Coreless Motorを電動アシスト自転車のインホイールモータとして適用する場合の性能(重量、トルク特性)について検討する。Axial Flux Coreless Motorに関しては、かなり多くの研究論文が出ており、基本的な特性はこれらの論文を参考にすることにより計算できる。最終的には試作機を製作して実測データで検証する必要があるが、初期検討の段階では論文の計算式で大まかな傾向は掴めるし、精度的にも十分と思われる。今回の検討には主に次の3論文の記述を参考にした。特に①の論文は色々な巻線タイプの性能と重量が計算できる数式が紹介されており有用である。
①Kamper,M.J.,Wamg,R.J.,Rossouw,G.G.(2008)'Analysis and performance of axial flux permanent magnet machine with air-cored non-overlapping concentrated stator windings',IEEE Transactions on Industry Applications,44(5):1495--1504,Setember/October 2008;
②Kirsten P. Duffy,'Optimizing Power Density and Efficiency of a Double-Halbach Array Permanent-Magnet Ironless Axial-Flux Motor'University of Toledo / NASA GRC
③森下明平、横山修一、奥山涼太、「デュアルハルバッハ配列界磁の磁束密度分布簡易計算法」、電気学会論文誌D(産業応用部門誌)
1)計算モデル
5㎜X5㎜四角で長さ20㎜のネオジウムマグネットを図に示すようにハルバッハ配列で並べて4本で一組のペアポールを作り、これを円周上に並べてリングを形成する。相対するリングは4㎜のギャップで配置する。永久磁石のリング(これが回転ロータとなる)の直径はポール数で決まることになる。直線の立方体の磁石を円周上に並べるので磁石と磁石の間に小さな三角形の隙間が出来るが、これは磁性体で埋めることとする。回転ロータで挟まれたギャップに配置される3相の固定子コイルの寸法は、幾何学的制限から計算し、厚さ3㎜、幅3.2㎜とした。(0.8㎜径のリッツ導線が12回巻ける)
固定子コイルの導線は渦電流損失低減のためリッツ導線が必須であるが、今回の検討では0.08㎜径の導線を60本束ねた外径0.8㎜のリッツ導線を採用すると仮定し、3㎜X3.2㎜の空間に12回巻きで挿入する。ピーク最大電流は5Aとしている。(実効電流3.5A)
永久磁石の残留磁束密度を1.3Tとすれば4㎜のギャップ間の平均磁束密度は0.87T(③論文より)となるのでコイルを通過する磁束密度としてはこの値を採用している。
また固定子コイルの配列方法として、次の3種類があるが、初期検討の計算としてA)のOverlappingを採用している。実際の試作にあたってはB)やC)についても検討する必要があると思われる。重量当たりのトルク(Nm/Kg)の比較では「Phase-Group」が一番軽く出来ると一般的に言われている。また製作面でもConcentrated(集中巻)の方が作り易い。
A)Overlapping B)Concentrated C)Phase-Group Concentrated
2)計算結果
右表に計算条件をまとめた、回転数237rpmは700-25Cのタイヤ(外径672㎜)を装着し時速30Km/hで走行する時のホイールの回転数である。(非合法領域ではあるが・・・)
極数は重量とトルクの兼ね合いで選択してゆくが、80極はロータの外径がホイールリムの内側に届く大きさであり、これが最大値となる。
ピーク電流についは相対比較のため最大値の5Aをすべての計算で使っているが、実際の運用ではこの50%程度が常用範囲となる。
右図に計算結果を示す。ここで重量はマグネットと固定子巻線の重さのみで、他の構造体の重量は含んでいない。(このタイプのモータはマグネットと固定子の重さが殆どを占める)
重量1Kgが目標なのでこれを基準に選ぶと極数は24~32で選択することになる。その場合のトルクは6.3~10.9Nmである。市販のBAFANG社製のインホイールモータ並みに30Nmのトルクを発揮するためには極数は52~56となり、その場合重量は約1.8Kgとなる。モータの直径を最大の80極まで上げた時はトルクは64Nm,重量は2.6Kg、重量当たりのトルクは約25Nm/Kgとなり、シーメンスの航空用モータに迫る。一般的には2.6Kgの重量をホイールリム付近につけて走る自転車は考えにくいので実現性はないと思うが、トルクを発揮するには径を大きくするしかないという当たり前の査証である。
右図にペア極数とロータ径、効率、出力の関係を示す。当然のことながら周速が上がると効率は上昇し、最終的には90%を超える。重量重視の選択(1Kg)ではロータ直径は200㎜程度となり、トルク重視の選択(30Nm)ではロータ直径は400㎜程度となる。
3)選択したモータの諸元
24極を選択した場合の、モータ諸元を右図に示す。出力は157W、トルクは6.35Nmと低めであり、周速を稼げていなので効率も77.9%と低い。ロータ外径が約200㎜であり、これは最も大きいディスクブレーキのロータ径とほぼ同じであるので、前輪にも後輪にも装着が可能である。またマグネット+固定子の重量が777gなので付帯部品を加えても、モータ重量は1Kgの目標にほぼ納まる。
トルクの絶対値が低いのが気になるが、このモータを実際に自転車に装着した場合の走行特性を計算すると、このモータを直結で使っても、平坦地であれが人力で漕がずにほぼ30Km/h前後まで出るし、10~25Km/hの実用域では効率も80%を超える。本プロジェクトは平坦地を淡々と走るという目標を設定しているので、これに対しては十分すぎる性能である。本コンセプトはもう少し詳細を詰める必要があるが、有力な候補になり得る。
実際のロータ構造の構想を下に示すが、市販のディスクブレーキのロータにマグネットホルダーをボルト締めする構造が一番簡単そうである。(ディスクブレーキの代わりに、そのままハブに装着できる)例えばシマノのXTRのロータを使った場合、合計の重量はぎりぎり1Kgに納まる計算となる。(市販のディスクブレーキロータは意外と軽い。またマグネットホルダーはプラスチック/FRP/カーボンなど非磁性体で製作できるので、軽量化しやすい)
前に出てきたミツバ製のインホイールモータ「M0124-AII」と特性を比較した。どちらも直径は約200㎜程度であり、アウターロータ方式の典型的なDCブラシレスモータと本モータはほぼ同じ性能である事が判る。重量はミツバが約2.8Kgであることから、重量の面でAxial Flux Coreless Motorが圧倒的に有利である。
(図中、Axial Flux Coreless Motorの電流値は2倍してプロットしている。破線がミツバのM124-AIIの特性である。)
24極Axial Flux Coreless Motorの特性
今回検討したAxial Flux Coreless Motorは高価な永久磁石をふんだんに使うので、メーカが市販のモータとして採用することは考えられないが、アマチュアが趣味のモータとして製作するには最適な型式であると考えられる。折角の高級な永久磁石を使いながら超低速で回すのは如何にも勿体ない感じがするが、普通のアウターロータDCブラシレスモータに比べても遜色ない性能であるし、何より軽量化のポテンシャルが高い。
因みに、この24極のモータを1200rpmで使った場合は、
出力:797W トルク:6.35Nm 効率:94.7% 比出力:0.79Kw/Kg
と、比較的低回転数で高効率を発揮する高性能なモータとなる。
Axial Flux Coreless Motorに関する検討はここで打ち切り、次回以降はリニアモータ方式の検討に入りたい。すべてのデータが揃った段階で最適モータ/方式の選定を行うこととしたい。
(次回に続く)
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