電動アシスト自転車の開発PJ(15)

 「電動アシストモータユニットの最近の動向」・・・続編

第13回で海外の軽量モーターユニットの最新動向を紹介したが、最近フランスのMAVICが軽量モーターユニット「X-Tend」を開発中であるとの記事があったので、参考のため以下に主な仕様を整理した。

MAVICが開発中のモーターユニットはボトムブラケット部に取り付けるタイプでありシマノなどの標準のクランクをそのまま流用できる点をウリとしている。

モーターユニットは長さ146mm、直径87mmであり、標準のQファクター内にそのまま納まる。ブラシレスDCモーターの出力軸を同心軸に配置される「サイクロ減速機」で減速する構造である。第13回で紹介したドイツの
「TQ-HPR50」(ハーモニックドライブ減速機)に似ている。サイクロ減速機は産業用に広く使われており、実績ある機構である。MAVIC社のものはピンで偏芯リングを駆動するのは通常のサイクロ減速機と同じであるが、
外周に歯車が切ってあるのが特徴である。
サイクロイダル減速機と称してパテントを申請している。
主な仕様は下記のとおり。

定格出力:     250W
最大出力:     390W
定格トルク:    39Nm
最大トルク:    50Nm
バッテリー容量:  360Wh
モーターユニット重量: 1.2Kg
システムトータル重量: 3.2Kg

ドイツの「TQ-HPR50」はシステムトータル
重量が3.68Kgだったのでこれを下回る重量
となる。電動アシストの世界もシビアな重量
低減競争の世界に入っているのだと実感させられる。
MAVICも含めて欧州の新興メーカは自転車込みのトータル重量で10Kg以下の電動アシストを目指しているように見える。図らずも本プロジェクトと志を同じにしており心強い。






以下に、最新の軽量電動アシストモーターユニットの仕様比較を示す。

モデル名     型式 最大トルク モーター重量 バッテリー容量 システム重量

                      
Swytch -      前ハブ  40Nm   1.5Kg     180Wh    2.6Kg
MAHLE-X20      後ハブ    55Nm     1.399Kg   360Wh    3.2Kg
MAVIC X-Tend  ミッド  50Nm   1.2Kg     360Wh    3.2Kg
TQーHPR50    ミッド  50Nm   1.85Kg   360Wh    3.68Kg
Specialized-SL1.1 ミッド  35Nm   1.95Kg   320Wh    3.75Kg
FAZUA 60    ミッド    60Nm   1.96Kg     430Wh    4.3Kg 

上記以外の主要メーカ(BOSCH、ヤマハ、シマノ、Panasonic)のモータユニットは重量が「3.0Kg-α」のレンジに納まっており、2.0Kgを切る製品は出していない。耐久性、効率、コストを総合的に勘案すると、主要メーカの仕様(構造)に収斂するのかも知れないが、上に上げた新興勢力の2.0Kgを切るモーターユニット重量、自転車の最低重量6.8Kgを意識してトータル重量10Kg以下電動アシストのシステム重量3.2Kg以下)を目指す心意気を評価したい。

ちなみにPanasonicは最近新しいスポーツ電動アシスト自転車を発表したが、いずれも重量は20Kg超えであり、欧州メーカの軽量化競争の世界とは雲泥の差である。Panasonicのママチャリ用新型モーターユニット(カルパワードライブユニット)は重量が2.8Kgと軽量であり軽量電動アシスト自転車のチューニング用として最適な素材ではあるが。







          



重量       25.5Kg              20.0Kg 
モーターユニット GXドライブユニット       カルパワードライブユニット
バッテリー容量  460Wh             300Wh

(次回に続く)

   

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