電動アシスト自転車の開発PJ(18)
「36Vバッテリーパックの特性試験」
前回紹介した36Vバッテリーパック(自称NCR18650Bを10S2Pの配列にパックしたもの)の初期テストが完了したので結果を紹介する。
要目:電池 NCR18650BX20セル 配列 10S2P
BMSボード 中国製メーカ不詳
セルホルダー 同上
電圧範囲 42V~34V
最大電流 9.8A(=4.9AX2)
(NCR18650B仕様に準拠)
電力容量 180Wh
(走行テストにより実測)
寸法 150㎜X95㎜X100㎜
重量 1370g
バッテリーパックのテストはAKM75のハブモータを装着したCannondaleを使い、決められたコースを周回することにより計測した。(急坂、緩坂ありの一周11.75Kmの典型的なサイクリングコースであり、走行は最大速度32~35Km/h、平均速度約20Km/hで、途中信号停止が何回かある)
走行テスト中の電流は3A~7.5A(レベル2~レベル4)の範囲にコントロールした。(システム上は15Aまで流せるが、電池セルの許容電流(4.9A)以上の過電流を流すと、BMSのコントロール範囲を逸脱してセル間のバランスが崩れることが判ったため、カタログ上の電池セルの最大電流範囲内(9.8A=4.9AX2)にとどめた)
フル充電での可能走行距離を確認するため、走行テストコースで周回を重ねたが、丁度4周目で下限電圧34Vに近づいたため中断した。右図は電圧降下(V)と消費電力(Wh)の関係をプロットしたものであるが、最低電圧を34Vとした場合の電力容量は電圧カーブの延長線で約180Whと読める。(線の折れ節(丸点)が一周の開始・終点を示す)4周のトータル走行距離は47Km、消費電力は169Whであり、平均電費は0.278Km/Whと言う結果になった。悪くない数値である。(日ごろ足代わりに使っているアシスタの平均電費は0.246Km/Whである)
一回の充電で40Km以上走行の目標を達成したことになる。(180Whまで使い切った場合、理論上50Kmまで走行できることになる)
このバッテリーパックの電力容量は180Whと計測されたが、電池セル当たりを計算すると9Wh/セルとなる。前回紹介したテスラの初期型ロードスターのバッテリーは同じNCR18650を使い、53KWh/5831セルであったことから、1セル当たりを計算すると9.09Wh/セルとなる。今回の走行テストで得られた値とほぼ同じである。まがい物と思っていた電池が意外と本物のNCR18650であった可能性がある。ただしテスラは「B」ではなく初期のモデルの「A」であるが。
メーカ不詳の中国製のBMSの性能もチェックしたが、各電池セルの電圧コントロールは、かなり精度よく行われていることが確認された。(実用になりそうである)
右図は電池セルの平均電圧と、20本の電池セルの電圧のバラツキをプロットしたものであるが、0.01~0.015V(約0.4%)の範囲に制御されているのが判る。さすがに最低電圧限界の34Vに近づくとバラツキが大きくなる。
以上のごとく、すべて中国製の部品で組み立てた36Vのバッテリーパックは意外と良く出来ていて、実用的な性能を有することが確認できた。
今回の一連の走行テストで気が付いたことであるが、AKMモータのキットに含まれていたコントローラの制御方式は、レベル切り替えにより入力電流を制御し、電圧はバッテリーからの電圧を制御せずにそのまま流している感じである。(説明書にはトルクシュミレーションのサイン波コントロールと書かれている。PASの信号をトルクに換算してPWMで制御していると考えられるが、漕ぎ始めは多少コントロールしている様子であるが、走り出してすぐに電圧は全開状態になる。詳細は不明。)トルクは電流で決まるのでトルクを出したい場合はレベルを上げて行けば良いが、電圧とモータの回転数(速度)がマッチしない場合は、高い入力電圧を無駄に消費してしまう。
今回購入したAKM75のハブモータは、高速回転型のギヤ比を選択しているので、36Vでの定格速度は41.55Km/h@328rpmとなる。従って30Km/h前後の速度域は、36Vの供給電圧にとって、かなり部分負荷となってしまい、モータの効率が悪い領域を使っていることになる。右図のAKMモータの推定性能線図から判るように、30Km/h前後の常用速度域では電圧は24V~28Vあれば十分であり、低電圧の方が効率がよいと推察される。これは実際の走行でも実感できる。走行中電圧が落ちるほど電費は改善されるのが実感された。この事象を正確に把握するため、次回はバッテリーパックの出口にDC-DCコンバータ降圧器を取り付けて効率最大の電圧を探る予定である。
結果的に、最初に装着してテストしたアシスタ用のバッテリー(24V-28V仕様)がベストマッチであった可能性がある。
(次回に続く)
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