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2月, 2022の投稿を表示しています

電動アシスト自転車の開発PJ(6)

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 「バッテリーについて」 軽量化を図る場合、バッテリーの重量は大いに気になるところであり、現在市販されている電動アシスト自転車用バッテリーの要目を調べた。バッテリーの取り付け方法として、フレームに外付けするタイプと、フレームの中に内臓するタイプがある。 下表に主要なメーカのバッテリーの要目を示すが、重量当たりの容量(Wh/Kg)は日本のママチャリ用の26V系とe-バイク用の36V系で明らかに差がある。36V系は三元系正極の電池が使われていると考えられ、26V系はマンガン酸リチウム正極の電池が使われているものと思われる。(リン酸鉄リチウムの可能性もあるが) いずれにしても、200Wh/Kgに近いエネルギー密度を持つリチウムイオン電池が入手可能であるという点で、軽量化設計の選択肢が広がる。 (上記主要メーカの製品は400Wh~500Wh以上と大容量志向であるが、本当は100Wh~200Wh程度の小容量軽量のパッケージが欲しいところではある。ーーバッテリーの重量が0.5~1.0Kgで済む) 因みに、最近流行りのドローン用の電池のエネルギー密度もほぼ200Wh/Kg付近であり、電動アシスト自転車の36V系とほぼ同じ水準である。 (次回に続く)

電動アシスト自転車の開発PJ(5)

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 「インホイール(ハブ)モータの調査」 ミッドシップ型に続き、インホイール型についても市販モデルの仕様について現状を見てみたい。ヤマハ、Bosch、シマノなど大手メーカはインホイールタイプを出していないが、国産では唯一ブリジストンが製品化している。(昔はサンヨーも前輪インホイールモータ方式を市販していた)ブリジストンは、Dual Drive と2輪駆動を売りにしている。(後輪を人力で駆動し、前輪をモータで駆動するという意味) 前輪のインホイールモータで減速時のエネルギー回生をするのがこのシステムの売りである。 海外では中華のメーカがDIY用の後付け部品として大々的に販売しており、どれもかなり安いし、手軽に改造出来そうである。その中でも大手のBAFANG社製の製品の仕様を下図にまとめた。重量は2.4Kgとそれ程重くないし、最大トルク30Nm(ホイール軸基準)はミッドシップ型(35~85Nm)に比べて小さく見えるが、通常走行でのクランク軸とホイール軸の増速率(1.2~3.5)を考慮するとそれほど細すぎるものでもない。自転車の走行抵抗曲線の上にプロットしてみると、ホイール軸基準で30Nmあれば殆どの坂は軽々上れることが判る。(実際はモータトルクに人力トルクが加算される) インホイールモータは「軽量電動アシスト自転車」のモータとして、ひとつの候補であり、30NmのBAFANG社製モータを使って実際の走行試験をしてみる価値はありそうである。BAFANG社では走行速度によりギヤを切り替えるバージョンもあり、この場合は低速トルクがさらに大きくなる。上図に示すモデルでは最高アシスト速度を25Km/h付近に設定しており、日常の使用範囲では十分な性能である。 下図にブリジストン社のインホイールモータの構造図を示す。インホイールモータは内部に2段式の遊星ギヤを配置して減速(減速比は15程度)するのが常套であり、どのメーカも殆ど同じ構造である。ブリジストンは最近(2022年末)この方式の販売を打ち切るとアナウンスした。構造トラブルか、または供給トラブル(中華製だった?)か不明。新しい形式はまだ発表されていない。(2023年1月時点) インホイールモータのもう一つの形態として、エコランやソーラーカーのレースで使われるギヤなしのモータ直接駆動型がある。ギヤロスがないことから、効率は90...

電動アシスト自転車の開発PJ(4)

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 「市販のパワーユニットの調査(補遺)」 これまでの調査で、ミッドシップ型のパワーユニットでは、各メーカともギヤの設計に色々な工夫をしているのが判ったが、大きな減速比を得るのに定番である遊星ギヤを使ったメーカが意外と少ない。シマノは遊星ギヤの塊である内装ギヤのトップメーカなので、遊星ギヤを使ってもいいのではと思ったが、最終的に採用しているのは単純な平歯車である。なぜ遊星ギヤを皆使わないのか?(信頼性?、コスト?)そいえば、日本のチェーン合力タイプのパワーユニットでも昔は遊星ギヤを使っていたメーカ(Panasonic?)があったような気がするが、いつの間にか普通のギヤタイプがメジャーとなっている。 その中で、ドイツのメーカであるBrose社は遊星ギヤとベルトで減速比を達成しているユニークな設計であることを見つけた。 また、Bosch社のギヤの構造を参考のため下図に示す。低負荷は樹脂ギヤ、高負荷は金属ギヤと使い分けている。 (次回に続く)

電動アシスト自転車の開発PJ(3)

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 「市販のパワーユニットの調査」 電動アシスト自転車では、ボトムブラケット部にモータを配置する「ミッドシップ型」と前輪または後輪にインホイールモータを配置する「ホイール直接駆動方式」があるが、現状では「ミッドシップ型」が主流になりつつあると思う。ヤマハ、Boschなど主要なメーカは殆ど「ミッドシップ型」を採用している。一方でインホイールモータはブリジストンの他には、中華メーカなどが供給するDIY用後付け部品が主で、メジャーとは言い難い状況である。 「ミッドシップ型」が主流になっている一番の理由は、人力と合体して自転車の変速器を活用できる点(低いギヤ比で大トルクが発揮できる)に加えて長年慣れ親しんできた自転車のジオメトリーがそのまま適用できる点であろう。(ホイールベースは変えずに済む) 「ミッドシップ」/「インホイール」のメリット、デメリットについては後で詳しく考察したい。 現在、主要メーカから販売されている「ミッドシップ型パワーユニット」の諸元を下表にまとめた。最大トルクについては80Nm、また最大ケイデンスは100rpm以上、重量は3.0Kg以下というのが各メーカの共通の目標になっているように思える。 この中で一番軽量なのはSpecialized社製のSL1.1Motorである。重量は僅か1.95Kgで他社製より1Kg以上軽い。ただし最大トルクは35Nmと控え目で一番低い。カタログに謳っているように、Specialized社の設計ポリシーが「2X’YOU’」と人力の1倍のアシストに徹していることからモータ、駆動系の体格を最小限まで小さくすることが出来たのだろう。公表されている出力、トルク特性もリーゾナブル(控え目)な範囲に収まっている。 このパワーユニットを搭載する一番軽いモデルは12.2Kgであり、今回のPJの目標である10Kg以下にかなり近い。一つのベンチマークにはなり得る。(バッテリーの重さを2.5~3.0Kgと仮定すれば、自転車本体は7.75~7.25Kgとなり、カーボンフレームの軽量自転車で達成可能な範囲である。) どのメーカも詳しい設計仕様は公表していないが、カタログデータ、その他情報から判ることは、モータはいずれも26~36V電圧のブラシレスDCモータ(インナーロータ式)であり、定格出力250Wとなっている。(これは法規制であるが)モータの回...

電動アシスト自転車の開発PJ(2)

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 「アシスタの実用電費はどの程度か?」 電動アシスト自転車の場合、電力消費は「バッテリーフルチャージで〇〇Km走れます」と一般的に表示され、現在ではワンチャージ=100Kmが商品開発の一つの目標になっているように思われる。一応100Km走れれば、一般的なサイクリングの用途として満足ということなのだろう。 日本では、業界団体である「自転車産業振興協会」が電力消費の試験方法を厳密に規定しており、下図に示すような上り坂、下り坂を含む4Kmの走行を模擬して電力消費を計測することになっている。坂道は7%勾配(4度)に設定されており、実際はこんなに坂道が続くことは稀なので、通常の走行には試験より走行距離が延びる場合が多いと思われる。(カタログにもそのように書いてある) ちなみにアシスタのカタログには走行距離として次のように表示されている。バッテリーの定格容量は8.7Ah(25.2V)=219Whであるが、常用容量はそれの90%程度、200Whに制限していると推定し、この値を使い1ワット時あたりの走行距離(電費)をそれぞれ計算した。 アシスタ走行距離(カタログ値)  強モード:32Km      0.16Km/Wh                  標準モード:38Km     0.19Km/Wh                  オートエコモード:54Km  0.27Km/Wh これらのカタログ値と実走行のデータを比較するため、日ごろよくサイクリングするコースを何回か走行して、平均的な実用電費を計測した。(皇居一周を含む市街地の周回コースで、坂道も結構含まれる。信号による停止も含めて平均速度は約20Km/h) 運転中の消費電力を計測するため、リチウム電池の出力端に電圧・電流計を接続して、消費電力を運転中に観察できるようにした。(中華製の電力計であるがよく出来ている) 下図が8回のチャージの走行データであるが、平均電費として 0.246Km/Wh というデータが得られた。これはカタログ値の「標準モード」と「オートエコモード」の中間に位置する。(ちなみに走行はすべて「標準モード」でおこなった) バッテリー残量表示メーターと消費した電力量の関係を下図に示す。180Whで残量はほぼゼロをしめす。また電圧も使用開始時に28.9Vであったものが、24Vまで低下する。(これはリチウム...

電動アシスト自転車の開発PJ(1)

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 「電動アシスト自転車」と言えば、日本で昔から販売されているママチャリタイプの電動アシスト自転車に加えて、最近では欧米が流行の発信源となり急速に普及しだした所謂「eーバイク」と呼ばれるカテゴリーの電動アシスト自転車も多数販売されている。用途により、選り取り見取りであるが、どの自転車も重たいのが欠点である。多くは重量が15~20Kg程度であり、軽量を狙ったものでも10Kgを切るものはまだ現れていない。電動アシストなので重量はそれ程気にしなくてよいと言えばそれまでであるが、やっぱり昔かたぎのサイクリストとしては軽量自転車のひとつの目安である10Kgは電動と言えどもクリアしたい。 このような背景のもと、総重量10Kgを切る電動アシスト自転車(e-バイク)が可能か否か、机上検討を進めて行くことにした。種々のFSから入り、最終的にはプロジェクトとして試作機製作まで到達したいが、そこまで行き着くかどうかは正直自信はありません。軽量の電動アシスト自転車の可能性の検討には、最新の工学技術を種々駆使する必要があり、また最近流行りの「ゼロカーボン」にも沿うものであり、結構奥が深い。 因みに現在日常の足として使っている「電動アシスト自転車」を紹介します。ブリジストンのアシスタ(2015年製)であり、当時はヤマハのPASと共通設計で生産されており、日本でも一番ポピュラーな電動アシスト自転車のひとつだと思う。結構よく出来ていてしかも安い。乗り易いように少し手を入れているが、これを使って電費(電力消費率)などの基本的な走行データを採取した。これから検討する10Kgを切る電動アシスト自転車の開発のベンチマークとなっている。

ブログの開始に当たって

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 「皆もすなるブログというものを、我もしてみむとてするなり。」と土佐日記風に軽いノリでブログをはじめます。 ブログを書いている本人は東京の中心に近いところに住む退役エンジニアです。退屈凌ぎとボケ防止のためにブログをはじめます。取り敢えずのテーマは直近の関心事である「電動アシスト自転車」「写真・水彩画」「エネルギー環境問題評論(色々意見がある)」等々ですが、好奇心に任せて色々つまみ食いして行きます。「知の散歩道」と言えるような高尚な議論が出来るといいのですが。